
下肢静脈瘤を放置して大丈夫?
- 下肢静脈瘤は放置して大丈夫?危険な症状と受診の目安を専門医が解説
- 足の血管がボコボコする下肢静脈瘤|放置してよい場合・治療すべき場合
- 下肢静脈瘤を放置するとどうなる?むくみ・だるさ・潰瘍までわかりやすく解説!!
「下肢静脈瘤」で悩まれている方は、「放置して大丈夫?」と心配されている方がとても多いです。
足の血管がボコボコ浮き出ていると、「このまま放置して命に関わらないのか」と不安になる方は少なくありません。
結論から言うと、下肢静脈瘤は放置しても、すぐに致死的な病気になることはほとんどありません。
つまり、「放置したら危ないですか」と聞かれれば、多くの場合は「命の危険という意味では大丈夫です」と答えます。
ただし、それは「何もしなくてよい」という意味ではありません。下肢静脈瘤は、生活の質をじわじわ下げる病気です。
足のだるさ、むくみ、こむら返り、かゆみ、見た目の悩みが続くと、外出や運動がおっくうになります。
進行すると、皮膚が茶色くなる色素沈着や、皮膚が硬くなる変化、治りにくい潰瘍に至ることもあります。
この記事では、「下肢静脈瘤を放置して大丈夫か」を、命の危険、生活への影響、治療選択の3つに分けて解説します。
【下肢静脈瘤を放置しても命に関わる?】
下肢静脈瘤は、足の表面を走る静脈の弁が弱くなり、血液が下へ逆流して血管がふくらむ病気です。
静脈とは、体をめぐった血液を心臓に戻す血管です。足では重力に逆らうため、弁が逆流を防いでいます。
この弁がうまく閉じなくなると、足の静脈に血液がたまり、血管が蛇行してボコボコと目立つようになります。
動脈瘤のように大きな血管が突然破裂する病気とは異なり、下肢静脈瘤が急に命を奪うことはまれです。
心筋梗塞や脳卒中のように、数分から数時間で命に関わる病気とは性質がまったく違います。
そのため、足の血管が浮いているだけで、「今すぐ救急受診が必要」と考える必要は通常ありません。
歴史をたどると、古代ギリシャ時代にはすでに静脈瘤や足の潰瘍が医学的な問題として扱われていました。
さらに、皮膚が薄く張りつめた静脈瘤が破れて大出血し、失血死したという報告も存在します。
しかし、現代の日本でそのような末期的な状態まで放置されることは、まず多くありません。
出血、強い痛み、皮膚のただれがあれば、多くの方はその前に受診します。医療機関も身近にあります。
したがって、下肢静脈瘤は「放置すると必ず危険な病気」ではなく、「放置すると困りごとが増える病気」と考えるのが正確です。
ただし、急に片足だけ強く腫れる、強い痛みがある、息切れや胸痛を伴う場合は別です。
その場合は深部静脈血栓症、つまり足の奥の静脈に血のかたまりができる病気などを考えます。
これは下肢静脈瘤とは別の病気ですが、見た目だけでは判断しづらいことがあり、早めの診察が必要です。
【下肢静脈瘤の進行とQOL(生活の質)の低下】
下肢静脈瘤で最も多い悩みは、命の危険ではなく、日常生活の不快感と見た目の問題です。
血管がボコボコする、青い血管が目立つ、夕方に足が重い、むくむ、夜中に足がつるなどが代表的です。
QOLとは「生活の質」という意味です。症状のせいで、いつもの生活を気持ちよく送れない状態を指します。
たとえば、立ち仕事の後に足がだるくて家事がつらい、買い物で長く歩けない、旅行を楽しみにくいことがあります。
また、スカートや短パンを避ける、温泉やプールで足を出したくないという整容面の悩みもあります。
整容性とは、見た目の自然さや美しさのことです。医療では、外見の悩みも大切な治療理由になります。
下肢静脈瘤が進行すると、足首の内側を中心に皮膚が茶色っぽくなる色素沈着が出ることがあります。
これは静脈の圧が高い状態が長く続き、皮膚に炎症が起こることで生じる変化です。
さらに、湿疹、かゆみ、皮膚の硬さ、傷が治りにくい状態へ進むこともあります。
重症になると、皮膚がえぐれたような傷である潰瘍ができ、通院や処置が長く続くことがあります。
潰瘍ができると、痛みや浸出液、包帯交換の負担が増え、歩行や入浴にも支障が出ます。
命に関わりにくい病気であっても、ここまで進むと生活への影響はかなり大きくなります。
そのため、「死なないなら放置でよい」と単純に考えるのはおすすめできません。
特に、皮膚の色が変わってきた、湿疹が治らない、足首の周りが硬い、傷が治りにくい場合は要注意です。
これらは静脈瘤が進行しているサインの可能性があり、早めに超音波検査を受ける価値があります。
超音波検査とは、体に害の少ない音波を使って、血液の流れや逆流を調べる検査です。
痛みはほとんどなく、静脈の弁がどれくらい壊れているか、治療が必要かを判断できます。
【下肢静脈瘤の治療と保存療法の選び方】
下肢静脈瘤を治療するかどうかは、血管の見た目だけで決まるわけではありません。
大切なのは、本人が日常生活をどれくらい不便に感じているか、見た目をどこまで改善したいかです。
症状が軽く、血管の逆流も強くない場合は、まず保存的加療を行うことがあります。
保存的加療とは、手術をせずに症状を和らげる方法です。生活習慣の見直しと弾性ストッキングが中心です。
弾性ストッキングは、足を外からほどよく圧迫し、血液が下にたまりにくくする医療用の靴下です。
立ちっぱなし、座りっぱなしを避け、ふくらはぎを動かすことも大切です。足の筋肉は血液を戻すポンプです。
長時間同じ姿勢が続く方は、時々かかとの上げ下げをする、休憩時に足を少し上げるとよいでしょう。
「動かない生活」で足の筋肉を使わない状態、いわゆる廃用も、静脈の流れを悪くする一因になります。
軽症で、気になる部分が細い血管だけの場合は、硬化療法が選択肢になります。
硬化療法とは、薬を血管の中に注入して、目立つ静脈を内側から閉じる治療です。
主に細い静脈瘤や網目状の血管など、整容性が気になる部分に行われることがあります。
一方で、太い静脈に明らかな逆流がある場合は、血管内治療が行われることが多くなっています。
血管内治療とは、細い管を静脈の中に入れ、レーザー、高周波、医療用接着材などで逆流する血管を閉じる治療です。
昔のように大きく切開して血管を抜く手術より、体への負担が少ない方法が普及しています。
ただし、どの治療がよいかは、静脈の太さ、逆流の場所、皮膚症状、持病、希望によって変わります。
大切なのは、「放置しても命に関わりにくいから受診しない」ではなく、「困っているなら相談してよい」と考えることです。
足のだるさやむくみが毎日つらい方、見た目が気になって服装を選べない方は、治療で生活が楽になる可能性があります。
逆に、症状がほとんどなく、見た目も気にならず、皮膚症状もない方は、経過観察でもよい場合があります。
下肢静脈瘤は、命の危険だけで治療を決める病気ではありません。生活の質と希望を基準に考える病気です。
「放置して大丈夫か」の答えは、「命の面では多くは大丈夫。ただし、生活の質を守るためには放置しすぎないでください」です。
気になる血管、足のだるさ、むくみ、皮膚の色の変化があれば、まずは超音波検査で状態を確認しましょう。
受診時には、いつから血管が目立つか、夕方に悪くなるか、立ち仕事の有無、妊娠や手術歴も伝えると診断がスムーズです。
自分の静脈瘤が軽症なのか、血管内治療を考える段階なのかを知るだけでも、不安はかなり軽くなります。
下肢静脈瘤は「命を守るために慌てる病気」ではなく、「足を快適に使い続けるために向き合う病気」です。

